のりさん牧師のブログ

おもに聖書からのメッセージをお届けします。https://ribenmenonaitobaishikirisutojiaohui.webnode.jp/

●要約:O.パーマ.ロバートソン「契約があらわすキリスト」(ヨベル社、2018年)②

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第8章 アブラハム―約束の契約

序論 アブラハムと神との関係には、神の主権的な働きかけがある。
・創世記12:1:主の問いかけではなく「厳命」
「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい。」
・創世記15章:アブラハム契約が正式に締結される。
⇒契約の本質が、「主権的に与えられた血による結びつき」。
⇒契約に示された約束を「主権的に確約した」。

1.アブラハム契約の正式な締結
 子のないアブラハム
・4節「ただ、あなた自身から生まれ出て来る者が、あなたの跡を継がなければならない。」
⇒主はめぐみにより、契約による結びつきを正式に取り決める。
       ↓
・当時の習慣にしたがって、動物たちを二つに裂き、その半分ずつを対面するように置き、鳥は殺すが裂かない。
⇒「煙の立つかまどと、燃えているたいまつ」が、裂かれた物の間を通りすぎた。
・主の生死を賭した誓約
⇒違反したら自らにのろいが降りかかるという誓い。→血による結びつき

2.アブラハム契約締結の儀式についての旧約聖書中の言及
・主のアブラハムに対する死を賭してまでの誓い→イスラエルの歴史全体に影響。
ユダ王国が捕囚の憂き目にあう直前に述べられている~1400年経ってもアブラハムが目撃した契約締結の儀式は、文化的意味を失っていない。
◎エレミヤ34章:ゼデキヤ王による契約更新の儀式。→バビロン包囲下にあるエルサレム
 エレミヤ34:17~20
17 それゆえ、主はこう言われる。『あなたがたはわたしに聞き従わず、各自、自分の同胞や隣人に解放を告げなかったので、見よ、わたしはあなたがたに──主のことば──剣と疫病と飢饉の解放を宣言する。わたしは、あなたがたを地のすべての王国にとって、おののきのもとにする。
18 また、わたしの前で結んだ契約のことばを守らず、わたしの契約を破った者たちを、彼らが二つに断ち切ってその二つの間を通った、あの子牛のようにする。
19 ユダの首長たち、エルサレムの首長たち、宦官と祭司と民衆すべてが、二つに分けた子牛の間を通った者たちである。
20 わたしは彼らを、敵の手、いのちを狙う者たちの手に渡す。その屍は空の鳥や地の獣の餌食となる。
●ここに込められたメッセージを理解するための注意点
①エレミヤ34章の言い回しは、創世記15章のことばに倣っている。
②エレミヤの時代におこなったことと、アブラハム契約での「死を賭した誓約」とは繋がりあっている現実のこと。
③ゼデキヤが採用した手続きが、モーセ契約の更新儀式の様式にしたがうものであること
は明白。→律法の書の朗読が重要な要素として取り入れられていた。
モーセ契約の定める儀式は、かたちは違えども、アブラハムとの約束の内実を体現するものだった。
・全国民に血がふりかけられた→「切り裂かれた物の間を通り過ぎる」ことと同じ意味。

3.新約聖書におけるアブラハム契約締結の儀式
 アブラハム契約において制定された契約ののろいは、新約聖書において、のろいからの解放というかたちで「新しい契約」が解釈されていく。

● ヘブル人への手紙9章15~20節
モーセの仲介により神がイスラエルと契約を結んだ際の「死を賭した誓約」を振り返る必要がある。
⇒「ディアテーケー」と死とのかかわりが、ヘブル9:15~20における思想展開全体を結びつける。
・ディアテーケー:「遺言」「契約」の意。
⇒死と「契約」を考える。~<死と契約はあきらかに結びついている>
①契約を結ぶものの死が、契約締結に際して象徴的にあらわされること。契約を結ぶ手続きは「死を賭した契約」という側面があらわれなければ完成しない。
②契約を破ったものにくだされる死が、契約の裁きがおこなわれる際に歴史的に成就すること。契約違反に死は不可避。
∴死によって遺言は発効し、死によって契約は結ばれ、その裁きも死をもって実行される。
③〈古い契約〉の違反によって降りかかってきたのろいは、イエス・キリストにくだった。
⇒契約による〈死を賭した誓約〉の帰結をその身にまともに引き受けることで、キリストは契約ののろいからひとびとを解放する。

●「新しい契約」の締結(マタイ26:28、ルカ22:20)
・マタイとルカを比較することで、実際のできごとを明瞭に思い描くことができる。
①キリストはご自分の血を「罪の赦しのために流される」⇒契約ののろいからの解放のための根拠とした。
②〈古い契約〉ののろいを取り除くだけでなく、「キリストの血」によって、〈新しい契約〉による祝福がもたらされる。
③キリストの血に二重の意味があるのは、最初に贖いの契約が制定されたときに、神がアダムに語ったことばに二重の意味があったことと通じている。
∴キリストはご自身に〈古い契約〉の呪いを受けつつ、同時に〈新しい契約〉の祝福の状態を始めることになる。

結論
アブラハムとの神の契約は、約束の契約であると特徴付けることができる。
⇒創世記15章に描かれた厳粛なる儀式によって、神はあがないを約束した。
                              
●神のみが、裂かれたものの間を通り過ぎたことによる約束を結び、その成就の責任をご自身に受けられた。
                            
・もちろんアブラハム側の責任もある。 
⇒父の土地を去ること。(創世記12:1以下)
⇒男子の子孫に対する契約の証印を施す。(創世記17:1,14)
・しかし、神みずからが実現のための全責任を負う。
イエス・キリストにおいて、神は約束を成就した。→キリストはご自身を差し出して、血を献げられ、肉は裂かれ、アブラハムへの約束のことばが成就した。